日本酒の仕込み【三】 -種麹を授ける-

シャン シャン シャン ──
しずまりかえった麹室の中で、
蒸しあがった米に種麹をそっと振りかける。
身動きをとってはいけない
風が起こってしまうから。
風を起こしてはいけない
種麹がとんでしまうから。
それ以外の時間が止まったかのように、
種麹を振りかける職人だけが
静かに仕事をまっとうしている。
薄い金色の粉雪が、
蒸米の上に静かに落ちていく。
ただその音だけが、響きわたる空間。
それはまるで神事のよう。
どうか良い酒ができますように。
祈りのような、その時間。
