壱岐の桜が目覚める時 ― 壱岐の花酵母の物語
壱岐の地に息づく桜。
その花から分離された酵母が、いま新たな酒造りの可能性を広げている。
その桜が根付くのは、壱岐の由緒ある「月讀神社」。
「神道発祥の地」とされる場所から酵母を得て、酒を醸す。
いくつもの候補の中から、この酵母が選ばれたことに、背筋が伸びる思いがある。
酒造りにおいて酵母は魂だ。
香りを決め、発酵を導き、酒の生命を形づくる。
壱岐の桜酵母がもたらすのは華やかさではなく、静かな力。
控えめに香りを添え、凛とした佇まいを見せる、まるで神事のような酒だ。
桜の下で眠っていた微生物が、壱岐の水と米に出会い、いま一つの酒となる。
土地と微生物と人が織りなす結び目に、壱岐ならではの「地酒」の本質が宿る。
選抜の過程は、人が人を選ぶのに似ている。
数多の中から、力強く、香り高く、調和に優れたものが残される。
壱岐の桜酵母もまた、声高に自己主張するのではなく、静けさの中に確かな存在感を示す。
横山の酒にしては穏やかだと言われるかもしれない。
だが、その穏やかさは落ち着きであり、安らぎであり、これまでにない一面を映し出す。
挑戦はいつも未知への扉を開く。
壱岐の桜の酵母を使った酒もまた、市場に投げかけられ、誰かの心を不意に掴むだろう。
桜の花が春にだけ咲くように、この酵母もまた一瞬の輝きを宿す存在だ。
その酒を口にする時、飲む者は壱岐の大地と、そこに眠る生命の記憶をも味わうことになる。
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