よこやま ひやおろし「秋を映す酒」

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春の寒造りで仕込まれた酒は、夏の間ひっそりと眠り、秋の訪れとともに目を覚ます。
その名は「ひやおろし」。

だが、それは自然に任せて熟成された姿ではない。
蔵人が心血を注ぐ温度管理によって導かれた、唯一の味わいである。

熟成は温度によって大きく姿を変える。高温に置けば進みは早いが、粗さが残り、口あたりは荒くなる。反対に、低温で長く寝かせれば、酒はゆっくりと丸みを帯び、きめ細やかな舌ざわりを纏う。
蔵人はその繊細な変化を見極め、もっとも美しい熟成へと酒を導くため、徹底した温度管理を行う。

その営みも今年で五年目。気候、そして米の出来により、毎年「うまさ」へ続く条件は変わる。
年々上がる夏の気温によって、酒米は固くなり、糖化しづらくなる。
それを見極めながら温度を調整し、今年も狙い通りの味わいを定めることができた。

壱岐は離島ながら、肉、魚、野菜、あらゆる食材が豊かに揃う美食の島。
その食材を存分に味わうためには、十分に旨味の乗った酒が欠かせない。

だが、決して重くはなく、秋の夜長を食事と共に楽しめる“切れ”をも備える必要があった。
今年のひやおろしは、その均衡を追い求めて仕上げられた。

ふくよかな秋を映し出す「よこやま」のひやおろしは、さんまの塩焼き、茸の香る鍋、醤油の風味をまとった煮物……旬の料理と寄り添い、互いを高め合う。
旨味がしっかりと乗りながらも、後口に切れを残す。
それこそが、造り手の答えだ。

さらに、ひやおろしの魅力は「時の移ろい」にある。
9月に飲むものと、10月、11月に口にするものとでは、同じ酒でありながらまるで違う表情を見せる。
熟成の一ヶ月ごとの積み重ねが、紅葉のように色を深め、味わいを豊かにしていく。
その変化を追うことこそ、日本酒の贅沢であり、神秘である。

ひやおろしは、ただの季節酒ではない。
温度を操り、熟成を導き、秋の実りと共鳴するために生まれた酒だ。
一杯に込められたその工夫を知れば、あなたは酒そのものだけでなく、造り手の祈りと季節の息吹をも味わうことになる。


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