良い酒は、良い水から生まれる
この当たり前のことが、どれほど難しいことか。
そのことを身をもって知った、5年間だった。
日本酒の約80%は水である。
どれほど技術があっても、どれほど米が良くても、どれほど情熱を注いでも、
その水が美味しくなければ、良い酒になる確率が下がる。
だからこそ私は、この生まれ育った壱岐島で日本一の日本酒を造るために、「良い水」を探し回った。
水源を求め、情報を収集し、時には山を歩き、採水しては分析を重ね。
ある場所では、水質の結果が思わしくなく。
ある場所では、良質な水が湧いていても、地盤が悪く、蔵を建てられない。
そんなことの繰り返しだった。
17ヶ所目、18ヶ所目……。
「次こそは」と願った19ヶ所目もまた、候補から外れた。
明治時代以降、壱岐島での日本酒蔵がなぜ淘汰されていったか。
その意味が少しづつ分かってきた。
そんな時に、ついに辿り着いた20ヶ所目。
そこだけが、水質・立地・環境、すべての条件を満たしていた。
鉄やマンガンを含まず、やわらかく清らかな軟水。
平地にあり、設備や原料の搬入も問題なし。
さらに、その土地には使われていない倉庫まであった。
まるで最初から、ここに導かれることが決まっていたかのように——
「待っていてくれたのか」と思うほど、そこには“水の神様”の気配があった。
この水と出会えなければ、間違いなく、島での酒造りの復活はない。
日本酒醸造の修業をしながら、水を探し続けた5年の日々。
毎日が悩みと挑戦の連続。
それでも、この島で、世界に誇れる酒を造るという夢を、諦めたくなかった。
柔らかく、透明感があり、ふくらみを持ちつつ、最後にスッとキレのある——そんな水。
だからこそ、その水で醸す酒は、心に残る味になる。
「良い水との出会いが、酒の可能性を広げる」
その言葉通り、ここの水が、重家酒造の未来への可能性を広げてくれたのだ。
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